ブログ低侵襲治療の実践

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  • 2016.08.27

    麻しんに関する基礎知識のQ&A

    I-1 麻しんとはどんな病気ですか?

    麻しんは麻しんウイルスによって引き起こされる急性の全身感染症として知られています。
    麻しんウイルスの感染経路は、空気感染、飛沫感染、接触感染で、その感染力は非常に強いと言われています。免疫を持っていない人が感染するとほぼ100%発症し、一度感染して発症すると一生免疫が持続すると言われています。また、麻しんウイルスは、ヒトからヒトへ感染すると言われています。
    感染すると約10日後に発熱や咳、鼻水といった風邪のような症状が現れます。2~3日熱が続いた後、39℃以上の高熱と発疹が出現します。肺炎、中耳炎を合併しやすく、患者1000人に1人の割合で脳炎が発症すると言われています。死亡する割合も、先進国であっても1000人に1人と言われています。
    近年はワクチンの2回接種が行われ、麻しんに感染する方の人数は減っています。

    I-2 麻しんはどうやって予防するのですか?

    麻しんは感染力が強く、空気感染もするので、手洗い、マスクのみで予防はできません。麻しんワクチンが有効な予防法といえるでしょう。また、麻しんの患者さんに接触した場合、72時間以内に麻しんワクチンの予防接種をすることも効果的であると考えられています。接触後5、6日以内であればγ-グロブリンの注射で発症を抑えることができる可能性がありますが、安易にとれる方法ではありません。詳しくは、かかりつけの医師とご相談ください。
    次項でも述べるように、最近は成人の麻しん患者の割合が増加しています。定期接種の対象者だけではなく、医療・教育関係者や海外渡航を計画している成人も、麻しんの罹患歴や接種歴が明らかでない場合は予防接種を検討してください。

    I-3  近年の麻しんの流行はどのような状況ですか?

    麻しんは毎年春から初夏にかけて流行が見られます。過去5年の推移を見ると、平成19・20年に10~20代を中心に大きな流行がみられましたが、平成20年より5年間、中学1年相当、高校3年相当の年代に2回目の麻しんワクチン接種を受ける機会を設けたことなどで、平成21年以降10~20代の患者数は激減しました。患者発生の中心は0~1歳となった一方で、20歳以上の成人例の割合も増加しています。
    またウイルス分離・検出状況からは平成22年11月以降は海外由来型のみであり、平成19・20年に国内で大流行の原因となった遺伝子型D5は見られません。
    平成27年3月27日、世界保健機関西太平洋地域事務局により、日本が麻しんの排除状態にあることが認定されました。
    麻しんの流行状況等に関する情報は、国立感染症研究所感染症情報センターのホームページで確認することができます。国立感染症研究所感染症情報センターのホームページアドレスは、( http://www.nih.go.jp/niid/ja/diseases/ma/measles.html)です。

    I-4 なぜ、平成19・20年に10代から20代の人を中心に流行したのですか?

    かつては小児のうちに麻しんに感染し、自然に免疫を獲得するのが通常でした。しかし、麻しんワクチンの接種率の上昇で自然に感染する人は少なくなってきています。
    10代から20代の人たちの中には、今まで一度も麻しんの予防接種を受けていない人がいます。そのうえ、そもそも予防接種は、一度で十分な免疫が獲得できるとは限らず、麻しんワクチンを一回接種しても、数%程度の人には十分な免疫がつかないことが知られています。そのような人達が蓄積していたものと考えられています。
    さらに、麻しんワクチンの接種率の上昇に伴って、麻しんの患者数が減り、麻しんウイルスにさらされる機会が減少しました。そのため、幼少時にワクチンを1回のみ接種していた当時の10代から20代の人は免疫が強化されておらず、時間の経過とともに免疫が徐々に弱まって来ている人がいたことも原因の一つと考えられています。
    Ⅰ-3で述べられているように、平成21年以降の10~20代の麻しんは激減し、患者発生の動向は変化しています。

    I-5 妊娠しているのですが麻しんの流行が心配です。どうしたらよいでしょうか?

    妊娠中に麻しんに罹ると流産や早産を起こす可能性があります。 妊娠前であれば未接種・未罹患の場合、ワクチン接種を受けることを検討すべきですが、既に妊娠しているのであればワクチン接種を受けることが出来ませんので、麻しん流行時には外出を避け、人込みに近づかないようにするなどの注意が必要です。また、麻しん流行時に、同居者に麻しんに罹る可能性の高い方(例えば麻しんワクチンの2回接種を完了していない者で、医療従事者や教育関係者など麻しんウイルスに曝露する可能性が高い者など)がおられる場合はワクチン接種等の対応についてかかりつけの医師にご相談ください。

    I-6 外国で麻しんになると大変なのですか?

    特に麻しんの発生がない、あるいは非常に少ない国・地域では、滞在中に麻しんを発症すると、感染の拡大防止のため、発症した本人の移動制限だけでなく、同行者の移動も厳しく制限されることがあります。

    II 予防接種について

    II―1 予防接種はどれくらいの効果があるのですか。副反応はあるのですか?

    麻しん含有ワクチン(主に接種されているのは、麻しん風しん混合ワクチン)を接種することによって、95%以上の人が麻しんウイルスに対する免疫を獲得することができると言われています。また、2回の接種を受けることで1回の接種では免疫が付かなかった5%未満の人に免疫をつけることができます。さらに、接種後年数の経過と共に、免疫が低下してきた人に対しては、2回目のワクチンを受けることで免疫を増強させる効果があります。2006年度から1歳児と小学校入学前1年間の幼児の2回接種制度が始まり、2008年度から2012年度の5年間に限り、中学1年生と高校3年生相当年齢の人に2回目のワクチンが定期接種に導入されています。
    1回目のワクチン接種後の反応として最も多く見られるのは発熱です。接種後1週間前後に最も頻度が高いですが、接種して2週間以内に発熱を認める人が約13%います。その他には、接種後1週間前後に発しんを認める人が数%います。アレルギー反応としてじんま疹を認めた方が約3%、また発熱に伴うけいれんが約0.3%に見られます。2回目の接種では接種局所の反応が見られる場合がありますが、発熱、発しんの頻度は極めて低いのが現状です。稀な副反応として、脳炎・脳症が100万~150万人に1人以下の頻度で報告されていますが、ワクチンとの因果関係が明らかでない場合も含まれています。
    なお、麻しん含有ワクチンは、ニワトリの胚細胞を用いて製造されており、卵そのものを使っていないため卵アレルギーによるアレルギー反応の心配はほとんどないとされています。しかし、重度のアレルギー(アナフィラキシー反応の既往のある人など)のある方は、ワクチンに含まれるその他の成分によるアレルギー反応が生ずる可能性もあるので、接種時にかかりつけの医師に相談してください。

    II-2  過去に麻しんに罹ったことがあるのですが予防接種を受けるべきでしょうか?

    今まで麻しんに罹ったことが確実である場合は、免疫を持っていると考えられることから、予防接種を受ける必要はありません。しかし、麻しんかどうか明らかでない場合はかかりつけの医師にご相談ください。たとえ罹ったことがある人がワクチン接種をしても副反応は増強しません。
    もし、麻しん又は風しんの片方に罹ったことがあっても、他方には罹っていない場合、定期接種対象者は麻しん風しん混合ワクチンの接種を定期として受けることができます。

    II-3 ワクチン接種を受けた方が良いのはどのような人ですか?

    定期接種の対象年齢の方々(1歳児、小学校入学前1年間の幼児、中学1年生、高校3年生相当年齢の人)は、積極的勧奨の対象ですが、定期接種の時期にない方で、「麻しんにかかったことがなく、ワクチンを1回も受けたことのない人」は、かかりつけの医師にご相談ください。
    平成2年4月2日以降に生まれた方は、定期接種として2回の麻しん含有ワクチンを受けることになりますが、それ以前に生まれた方は、1回のワクチン接種のみの場合が多いと思います。医療従事者や学校関係者・保育福祉関係者など、麻しんに罹るリスクが高い方や麻しんに罹ることで周りへの影響が大きい場合、流行国に渡航するような場合は、2回目の予防接種についてかかりつけの医師にご相談ください。

    II-4 麻しんの予防接種を受けるのに、単独の麻しんワクチンの替わりに、MRワクチン(麻しん風しん混合ワクチン)を接種しても健康への影響に問題ありませんか?

    麻しんの予防対策としては、MRワクチンは単独ワクチンと同様の効果が期待されます。
    また、麻しんワクチンの替わりにMRワクチンを接種しても、健康への影響に問題はありません。むしろ風しんの予防にも繋がる利点があります。
    ただし、MRワクチンは、生ワクチンという種類のワクチンですので、妊娠している女性は接種を受けることができません。また、妊娠されていない場合であっても、接種後2カ月程度の避妊が必要です。おなかの赤ちゃんへの影響を出来るだけ避けるためです。
    また、麻しんの単独ワクチン、風しんの単独ワクチンの接種に当たっても、妊娠している方は接種を受けることはできません。接種後2カ月程度、妊娠を避けるなど同様の注意が必要です。

    『感染症エクスプレス@厚労省』

  • 2016.08.16

    MRI検査を受けらる方

    リラックスして検査を受けていただけるよう

    検査中にBGMを流しています。

    当日お気に入りのCDをお持ちいただければ
    検査中BGMとして流させていただきます。

    但しノリノリになって動かないようにだけお願いしますね。

  • 2016.08.12

    ◆「おたふくかぜ」が流行っています。◆

    ◆「おたふくかぜ」が流行っています。◆
    おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)は、通常2~3週間程度の潜伏期間を経て
    発症し、片側または両側の唾液腺(耳下腺が最も多い)が全体的に腫れ、
    しばしば発熱を呈します。有効な抗ウイルス薬は現時点ではありませんが、
    通常は発症しても1~2週間程度で軽快します。

    しかし、以下の2点を、是非知っておいて頂きたいと思います。
    ①無菌性髄膜炎、髄膜脳炎、難聴(永続的)、睾丸炎、卵巣炎、膵炎
    などの合併症を来すことがある。
    ②おたふくかぜを発症する数日前からウイルスが排出される。

    今、おたふくかぜの報告数は、5年ぶりに高い水準で推移しています。
    さらなる流行を防ぐには、予防が最も重要であり、おたふくかぜワクチンの接種
    (1歳以上で)が重要な手段です。特に集団生活に入る前に、ワクチン接種で
    あらかじめ予防しておくことが、現在取り得る最も効果的な予防法です。

    【感染症エクスプレス@厚労省】

  • 2016.08.05

    ◆夏風邪 ヘルパンギーナが流行っています◆

    夏風邪は主に、手足口病、ヘルパンギーナ、咽頭結膜熱(プール熱)
    の3種類に分類されます。この中でも、全国的にヘルパンギーナが流行
    しています。

    ヘルパンギーナは、主に乳幼児が罹患する疾患ですが、大人にも罹患
    します。
    ウイルス性ですので抗菌薬は効きませんし、ワクチンもありません。
    そのため、感染予防が重要になります。感染者との濃厚な接触を避け、
    手洗い・うがいを徹底しましょう。

    ヘルパンギーナの由来は、ドイツ語で「水疱(ヘルペス)」と「喉の
    炎症(アンギーナ)」であり、その名の通り、熱と口腔粘膜に水疱性の
    発疹があらわれることを特徴とした急性の「ウイルス性咽頭炎」です。

    小児では発熱時に熱性けいれんを伴うこともあります。また、特に乳
    児では経口摂取が不良となった結果、脱水症に陥ることや、時に髄膜炎
    や心筋炎など重症化することもあるため、注意が必要です。

    【感染症エクスプレス@厚労省】

  • 2014.08.01

    食道癌、胃癌、大腸癌はどのように治療されているか(特別寄稿)

    第三章 大腸癌            谷川 允彦

    はじめに

    消化器癌の治療は内視鏡外科手術の導入により、過去20年間に大きく、そしてゆっくりと変化してきています。 大学を離れ、本院を立ち上げて以来のこの三年間に、各関連学会での消化器癌内視鏡外科のシンポジウム・パネルディスカッションなどで、特別発言を務めさせていただく機会を再三経験してきました。そこで、ここに、それらの発言を集約する内容を提示することにより、この第三章では大腸癌の治療様式の現状を紹介しながら、内視鏡外科の位置づけを明らかにしたいと思い、この特集を組みました。一人でも多くの読者のご理解に役立つことができれば、大変嬉しく思います。

    我が国の大腸癌の罹患数と治療様式

    本院が在る“大阪府のがん”http://www.ccstat.jp/osaka/index.htmlは大阪府立成人病センターによる地域癌登録事業によって行われてきた成果ですが、その質の高さから関係機関からも高い評価を受けています。 一方、全国のがんについては平成16年度 (2004) に始まった第3次対がん10か年総合戦略研究事業「がん罹患・死亡動向の実態把握に関する研究」の推進によって癌の全国登録制度が次第に整備されてきており、その成果が記載されている国立がん研究センターの”がん情報“ http://ganjoho.jp/public/index.html から多くのことを知ることができます。また、厚生労働省データーベースhttp://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000037024.html から、DPC保険診療記録に基づいた各疾患の数とそれらに対する治療様式の実際を調べることができます。これらを駆使して、本院が対象疾患の一部にしている大腸癌の罹患数とその治療の現状を紹介することに致します。

    (1) 大腸とは;
    大腸は食物が消化吸収された残りの腸内容物をため、水分を吸収して大便にする器官です。大腸菌や乳酸菌などの100種類以上の腸内細菌が存在しており、食物繊維の分解や感染予防の働きなどをしています。
    大腸は盲腸から始まります。盲腸から上(頭側)に向かう部分が上行結腸、次いで横に向かう部分を横行結腸、下に向かう部分が下行結腸、S字状に曲がっている部分がS状結腸、約15cmの真っすぐな部分が直腸で、最後の肛門括約筋のあるところが肛門管です。

    (2) 疫学;
    大腸癌は、長さ約2mの大腸(結腸・直腸・肛門)に発生する癌で、日本人ではS状結腸と直腸にできやすいといわれています。
    大腸粘膜の細胞から発生し、腺腫というポリープ状の良性腫瘍の一部が癌化して発生したものと正常粘膜から直接発生するものがあります。大腸癌では、直系の親族に同じ病気の人がいるという家族歴が、リスク要因になります。特に、家族性大腸腺腫症と遺伝性非ポリポーシス性大腸癌家系は、明らかな大腸癌のリスク要因とされています。生活習慣では、過体重と肥満、飲酒、加工肉などでリスクが高くなるとされています。

    (3) 罹患率、罹患数;
    大腸癌にかかる割合(罹患率)は、50歳代から増加し始め、高齢になるほど高くなります。大腸癌の罹患率、死亡率はともに男性では女性の約2倍と高く、結腸癌より直腸癌において男女差が大きい傾向があります。
    大腸癌の罹患数は1990年代半ばまで増加し、それ以降は横ばい傾向にあります。(図8)に2005年以降の我国の罹患数の推移を示していますが、直近の2009年まで約3,000例/年の漸増を示していますが、これは食道癌の項でも述べたように癌罹患数の変化の実態を捉えているとするよりも、癌登録制度が整備されてきたことによる届出数の継続的な増大が主要因と考えられています。罹患率の国際比較では、結腸癌はハワイの日系移民が日本人より高く、欧米白人と同程度であることが知られていましたが、最近では、結腸癌・直腸癌ともに、日本人はアメリカの日系移民および欧米白人とほぼ同じになっています。

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    (4) 症状;大腸癌の症状は、大腸のどの部分に、どの程度の癌ができるかによって異なります。多い症状としては、血便、下血、下痢と便秘の繰り返し、便が細い、便が残る感じ、おなかが張る、腹痛、貧血、原因不明の体重減少などがあります。中でも血便の頻度が高いのですが、痔などの良性疾患でも同じような症状がありますので、早めに消化器科、胃腸科、肛門科などを受診することが早期発見につながります。時には、癌による腸閉塞症状から嘔吐などで癌が発見されたり、大腸癌の転移が、肺や肝臓の腫瘤として先に発見されることもあります。

    (5) 治療様式;
    厚生労働省データーベースによると2011年4月から2012年3月までの一年間にDPCないしDPC準備病院において行われた大腸癌治療症例数は92,728例であり、その治療別内訳は開腹大腸切除再建術 38,516例 (41%)、腹腔鏡下大腸切除再建術 35,342例 (38.1%)、そして内視鏡治療 18,866例 (20.3%) となっています。 すなわち、開腹ないし腹腔鏡による大腸癌切除再建術が73,858例に行われており、切除再建術を企図した症例の内の47.8%に腹腔鏡手術が行われていることになります。一方、National Clinical Databaseによると2011年の1月から2012年12月までの2年間に施行された腹腔鏡下手術を含んだ大腸癌切除再建例数は195,206例とされており、一年間に約97,000例に切除再建術が行われています。 両調査の間に2万余例の乖離があることから、NCDの詳細な成績開示が待たれるところです(表3)。 前述のごとく腹腔鏡下手術数の年次別推移については日本内視鏡外科学会が隔年に行っている全国アンケート調査があり、その結果の大腸癌部分を(図9)に示しています。1992年に始まって以来、過去20年間に対数曲線的に増加してきており、最近の2011年の1年間に切除再建術を適応とした35,048例のうち16,417例(46.8 %)という高頻度に腹腔鏡手術が選択されていると報告されています。この値は前述の厚労省データーベースからの調査に基づく73,858例の切除再建例数でもほぼ同様の頻度を示しており、大腸癌手術に内視鏡外科が高頻度に利用されていることが分かります。この点に関する更に確実な検証には10万例に近い膨大な切除再建例数となっているNCDの詳細な検討結果が待たれるところです。

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    おわりに

    腹腔鏡や胸腔鏡などを用いた内視鏡外科は体表面の傷が小さいことから術後の痛みが少なく、早期の退院と早い社会復帰を可能にしました。1985年にドイツの片田舎で始まった腹腔鏡下胆嚢摘除術は従来の開腹による方法に比べて患者への負担が格段に低いことから瞬く間に世界に広まり、今や胆嚢結石や胆嚢ポリープの標準的治療法になっています。その普及の波は胆嚢から今回テーマにした大腸癌の治療様式にも影響してきています。本論文ではその現状を臓器ごとに分けて紹介させていただきました。ロボット手術に代表されるように、医用工学の進歩とあいまって進化している画像装置、手術器材を用いて行う内視鏡外科の更なる発展は疑いのないところと思われます。

    参考文献

    1) Litynski GS. Erich Mühe and the rejection of laparoscopic cholecystectomy (1985): A surgeon ahead of his time. J Soc Laparoendo Surg, 1998. 2(4); 341-346
    2)宮田 裕章,大久保豪,友滝愛,後藤 満一,今野 弘之,橋本英樹,岩中督,森正樹. 特別企画3:National clinical data base (NCD) のデータから見た我が国の消化器外科医療水準と今後の展開.課題番号 : SS-3-1 消化器外科領域における今後の医療水準評価関連分析の展望.第68回日本消化器外科学会総会;2013/7;宮崎
    3)大阪府のがん http://www.ccstat.jp/osaka/index.html
    4)がん情報 http://ganjoho.jp/public/index.html
    5)厚生労働省データーベース http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000037024.html

  • 2014.07.18

    食道癌、胃癌、大腸癌はどのように治療されているか(特別寄稿)

    第二章 胃癌             谷川 允彦

    はじめに

    消化器癌の治療は内視鏡外科手術の導入により、過去20年間に大きく、そしてゆっくりと変化してきています。 大学を離れ、本院を立ち上げて以来のこの三年間に、各関連学会での消化器癌内視鏡外科のシンポジウム・パネルディスカッションなどで、特別発言を務めさせていただく機会を再三経験してきました。そこで、ここに、それらの発言を集約する内容を提示することにより、ここでは胃癌の治療様式の現状を紹介しながら、内視鏡外科の位置づけを明らかにしたいと思い、この特集を組みました。一人でも多くの読者のご理解に役立つことができれば、大変嬉しく思います。

    我が国の胃癌の罹患数と治療様式

    本院が在る“大阪府のがん”http://www.ccstat.jp/osaka/index.htmlは大阪府立成人病センターによる地域癌登録事業によって行われてきた成果ですが、その質の高さから関係機関からも高い評価を受けています。 一方、全国のがんについては平成16年度 (2004) に始まった第3次対がん10か年総合戦略研究事業「がん罹患・死亡動向の実態把握に関する研究」の推進によって癌の全国登録制度が次第に整備されてきており、その成果が記載されている国立がん研究センターの”がん情報“ http://ganjoho.jp/public/index.html から多くのことを知ることができます。また、厚生労働省データーベースhttp://www.mhlw.go.jp/stf/ shingi/0000037024.html から、DPC保険診療記録に基づいた各疾患の数とそれらに対する治療様式の実際を調べることができます。これらを駆使して、本院が対象疾患の一部にしている胃癌の罹患数とその治療の現状を紹介することに致します。

    (1) 胃とは;
    胃は腹部にある袋状の臓器で、食道と小腸の間にあります。小腸は十二指腸、空腸、回腸の3つの部分に分かれており、胃の出口は十二指腸とつながっています。食道との境目の入り口部分を噴門部、中心部分を胃体部、出口部分を幽門部といいます。また、胃の壁は5層に分かれ、大別すると、最も内側の層は胃液や粘液を分泌する粘膜、中心が胃の動きを担当する固有筋層、外側は胃全体を包む薄い膜で漿膜です。
    主な役割は2つあり、食物を一時的に貯蔵することと、消化する働きです。食物を食べると、喉から食道を通って胃に入ります。食道は、単なる食物の通り道にすぎませんが、胃は胃袋とも呼ばれ、食物をしばらくためておきます。その間に固形状の食物を砕いて細かくしたり、胃液と混ぜ合わせ粥状になるまで消化し、適量ずつ十二指腸へ送り出します。

    (2) 疫学;
    胃癌は、胃の壁の最も内側にある粘膜内の細胞が、何らかの原因で癌細胞になったものです。細胞の分類としては、組織型(顕微鏡で観察したがん細胞の外見)のほとんどが腺癌で、分化度は大きく分類すると、分化型と未分化型に分けられます。同じ胃がんでも、細胞の組織型や分化度で治療方針は異なります。
    胃癌発生については、多くの研究が行われており、いくつかのリスク要因が指摘され、喫煙や食生活などの生活習慣や、ヘリコバクターピロリ菌の持続感染などが原因となりうると評価されています。
    食生活については、塩分の多い食品の摂取や、野菜、果物の摂取不足が指摘されています。また、ヘリコバクターピロリ菌については、日本人の中高年の感染率は非常に高く、若年層では低下していますが、感染した人の全てが胃癌になるわけではありません。現在、除菌療法が胃癌にかかるリスクを低くするという研究結果が集積されつつありますので、感染していることがわかれば、除菌療法が推奨され、定期的な胃の検診を受けることが勧められます。感染の有無にかかわらず、禁煙する、塩や高塩分食品のとり過ぎに注意する、野菜、果物が不足しないようにするなどの配慮が重要となります。

    (3) 罹患数と罹患率;
    胃癌の罹患率は減少しているのは周知のこととなっていますが、罹患数が図3に示すように依然として漸増中であることはあまり認識されていません。図4は大阪府の性別、年齢階級別の罹患率を示していますが、男性の方が女性よりも高く、高齢者ほど高いこと、そして同じ年齢でも最近生まれほど低いことが明らかになっています。特に1948年以降の誕生者(戦後生まれ)の減少が著しく、こうした最近生まれの者ほど罹患率が低いという現象は、全国的にも世界的にもほぼ共通しています。こういうデータを見れば、胃がんのリスクはどんどん下がってきており、今後もこの傾向は継続すると考えられています。

    図5に2010年の我が国の人口ピラミッドを示しましたが、顕著な少子高齢化に向かっていることが理解できます。すなわち、罹患率は全体に減少傾向にあるものの、罹患率の高い高齢層が増加していくために、結局罹患数は減少するどころか逆に増加しているわけです。 図6に国立がん研究センターの雑賀らの胃癌の罹患数と死亡数の将来推計の結果を示しています。罹患率のこれまでの動向と将来推計人口を用いて行ったもので、現在最も信頼性が高い推計値と考えられています。胃癌の年齢階級別罹患数と死亡数をそれぞれ積み上げたグラフですが、全年齢では、現在の罹患数年間13万4千人が15年後(2025-29年)には15万人に増加し、それらは主として75歳以上(オレンジ色の部分)であり、75歳未満の罹患数は減少すると推測されています。

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    (4) 症状;
    胃癌は、早い段階で自覚症状が出ることは少なく、かなり進行しても無症状の場合があります。代表的な症状は、胃の痛み・不快感・違和感、胸焼け、吐き気、食欲不振などがありますが、これらは胃癌特有の症状ではなく、胃炎や胃潰瘍の場合でも起こります。検査をしなければ確定診断はできませんので、症状に応じた胃薬を飲んで様子をみるよりも、まず医療機関を受診し、検査を受けることが重要です。症状の原因が、胃炎や胃潰瘍の場合でも、内視鏡検査などで偶然に、早期胃癌が発見されることもあり、貧血や黒色便が発見のきっかけになる場合もあります。食事が喉を通らない、つかえる、体重が減る、といった症状は、進行胃癌の可能性もあるため、早めに医療機関を受診する必要があります。

    (5) 治療様式;
    厚生労働省データーベースによると2011年4月から2012年3月までの一年間にDPCないしDPC準備の1,634病院において行われた胃癌治療症例数は103,015例であり、その治療別内訳は開腹胃切除術 36,832例 (36%)、腹腔鏡下胃切除術 13,941例 (13%)、そして内視鏡治療 52,242例 (51%) となっています。 すなわち、2011年の1年間に開腹ないし腹腔鏡による胃切除術が50,773例に行われており、その中で腹腔鏡手術が27.4% の症例に適用されていることになります。一方、日本外科学会のNational Clinical Databaseによると2011年の1月から2012年12月までの2年間に施行された胃癌切除例数は112,684例とされており、両調査ともに一年間の同手術の施行数が5万余と凡そ一致しており、これらの数値は信頼性が高いということができます(表2)。 その中で施行されている腹腔鏡下胃癌手術数の年次別推移について日本内視鏡外科学会が隔年に行っている全国アンケート調査結果を(図7)に示しています。1991年に我が国で初めて行われて以来、過去20年間に対数曲線的に増加してきましたが、最近になってその傾向が横ばいになってきたことが分かります。切除再建手術を適応にした症例の中で約1/4に腹腔鏡手術が適用されている事実は重要だと思われます。 食道癌や後述する大腸癌に対する内視鏡外科の適用に比べて腹腔鏡胃癌手術数の伸びが少ない要因として、開腹手術と比較して非劣性を明示するエビデンスが不十分なために、胃癌治療ガイドラインにおいて早期癌に限定した試験的治療という推奨であることが強く影響していると考えられます。

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    おわりに

    腹腔鏡や胸腔鏡などを用いた内視鏡外科は体表面の傷が小さいことから術後の痛みが少なく、早期の退院と早い社会復帰を可能にしました。1985年にドイツの片田舎で始まった腹腔鏡下胆嚢摘除術は従来の開腹による方法に比べて患者への負担が格段に低いことから瞬く間に世界に広まり、今や胆嚢結石や胆嚢ポリープの標準的治療法になっています。その普及の波は胆嚢から今回テーマにした胃癌の治療様式にも影響してきています。本論文ではその現状を臓器ごとに分けて紹介させていただいています。ロボット手術に代表されるように、医用工学の進歩とあいまって進化している画像装置、手術器材を用いて行う内視鏡外科の更なる発展は疑いのないところと思われます。

    参考文献

    1) Litynski GS. Erich Mühe and the rejection of laparoscopic cholecystectomy (1985): A surgeon ahead of his time. J Soc Laparoendo Surg, 1998. 2(4); 341-346
    2)馬場 秀夫,渡邊 雅之,宮田 裕章,他。特別企画3:National clinical data base (NCD) のデータから見た我が国の消化器外科医療水準と今後の展開.演題番号 : SS-3-3 胃全摘術—NCDデータからみた我が国の現状と今後の展開— 第68回日本消化器外科学会総会, 2013/7, 宮崎
    3)大阪府のがん http://www.ccstat.jp/osaka/index.html
    4)がん情報 http://ganjoho.jp/public/index.html
    5)厚生労働省データーベース http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000037024.html

  • 2014.07.04

    食道癌、胃癌、大腸癌はどのように治療されているか(特別寄稿) 

    第一章 食道癌            谷川 允彦

    はじめに
    消化器癌の治療は内視鏡外科手術の導入により、過去20年間に大きく、そしてゆっくりと変化してきています。 大学を離れ、本院を立ち上げて以来のこの三年間に、各関連学会での消化器癌内視鏡外科のシンポジウム・パネルディスカッションなどで、特別発言を務めさせていただく機会を再三経験してきました。そこで、ここに、それらの発言を集約する内容を提示することにより、食道癌、胃癌、大腸癌の治療様式の現状を三章に分けて紹介しながら、各疾患に対する内視鏡外科の位置づけを明らかにしたいと思い、この特集を組みました。一人でも多くの読者のご理解に役立つことができれば、大変嬉しく思います。

    我が国の食道癌の罹患数と治療様式
    本院が在る“大阪府のがん”http://www.ccstat.jp/osaka/index.htmlは大阪府立成人病センターによる地域癌登録事業によって行われてきた成果ですが、その質の高さから関係機関からも高い評価を受けています。一方、全国のがんについては平成16年度 (2004) に始まった第3次対がん10か年総合戦略研究事業「がん罹患・死亡動向の実態把握に関する研究」の推進によって癌の全国登録制度が次第に整備されてきており、その成果が記載されている国立がん研究センターの”がん情報“ http://ganjoho.jp/public/index.html から多くのことを知ることができます。また、厚生労働省データーベースhttp://www.mhlw.go.jp/ stf/shingi/0000037024.html から、DPC保険診療記録に基づいた各疾患の数とそれらに対する治療様式の実際を調べることができます。これらを駆使して、ここでは本院が対象疾患の一部にしている食道癌の罹患数とその治療の現状を紹介することに致します。

    (1) 食道とは;
    食道は、喉(咽頭)と胃の間をつなぐ長さ25cm、太さ2~3cm、厚さ4mmほどの管状の臓器で、口から胃へ食べ物を送る働きをしています。食道の大部分は胸の中、一部は首(約5cm、咽頭の真下)、一部は腹部(約2cm、横隔膜の真下)にあります。食道は体の中心部にあり、胸の上部では気管と背骨の間にあり、下部では心臓、大動脈と肺に囲まれています。
    食道の壁は、内側から外側に向かって粘膜、粘膜下層、固有筋層、外膜の4つの層に分かれています。食道の内側は、食べ物が通りやすいように、粘液を分泌するなめらかな粘膜でおおわれています。粘膜の下には、筋層との間に、血管やリンパ管が豊富な粘膜下層があります。食道の壁の中心は、食道の動きを担当する筋肉の層です。筋層の外側の外膜は、周囲臓器との間を埋める結合組織で、膜状ではありません。
    食道は、口から食べた食物を胃に送る働きをしています。食物を飲み込むと、重力で下に流れるとともに、筋肉でできた食道の壁が動いて食べ物を胃に送り込みます。食道の出口は、胃内の食物の逆流を防止する構造になっています。これらは食道を支配する神経と、食道の筋肉の連係により働くしくみとなっています。食道には消化機能はなく、食物の通り道にすぎません。

    (2) 疫学;
    日本人の食道癌は、約半数が胸の中の食道中央付近から発生し、次いで1/4が食道の下部に発生します。食道癌は、食道の内面をおおっている粘膜の表面にある上皮から発生します。 60歳代に好発し、男女比は、3:1程度であり、また、食道癌全体の93%以上を食道扁平上皮癌が占めていますが、アメリカではここ30年ほどで扁平上皮癌の割合が低下し、現在では約半数を食道胃接合部近傍の腺癌が占めています。その原因は明らかではありませんが、ひとつは日本より進んでいる禁煙による癌発症予防効果が扁平上皮癌の方が高いことが挙げられています。白人に比べて喫煙率が高い黒人では扁平上皮癌の罹患率がより高いことも示されています。また、バレット食道の罹患率がアメリカのほうが格段に高いという点も理由に挙げられます。

    (3) 罹患数;
    大阪府の食道癌症例は1975年には500 弱であったが、その後次第に増加していき、32年後の2007年には1,300 症例となり、その間に2.5倍増えたことになっています。この漸増傾向は全国でも同様でありまして、2003年に16,400例であったものが7年後の2009年には20,800例となっています。(図1)しかし、重要なことはこうした値の変化が罹患数の変化の実態を捉えているとするには問題が多く、上記のように2004年から始まった癌登録に関する研究推進の間に、各地域におけるがん診療連携拠点病院の指定による院内がん登録の整備、DPC病院における地域医療指数に地域がん登録への参画が記載されたことによる届出数の継続的な増大が変化の主要因と考えられており、直近の2009年の罹患数は登録制度の整備を受けて、より実数に近い値になってきていると解釈するのが妥当と思われます(図1)。すなわち、年間に約2万例の食道癌症例が発生しているとするのが現状です。

     

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    (4) 症状;
    ① 無症状:食道癌は、初期には自覚症状がないことが多く、健康診断や人間ドックのときに内視鏡検査などで発見されることが20%近くあります。無症状で発見された食道癌は、早期であることが多く、最も治る確率が高くなります。
    ② 食道がしみるような感覚: 食べ物を飲み込んだときに胸の奥がチクチク痛んだり、熱いものを飲み込んだときにしみるように感じるといった症状は、がんの初期のころにみられるので、早期発見のために注意していただきたい症状です。軽く考えないで、内視鏡検査を受けることをお勧めします。がんが少し大きくなると、このような感覚を感じなくなります。症状がなくなるので気にしなくなり、放っておかれてしまうことも少なくありません。
    ③ 食物がつかえるような感覚: 癌がさらに大きくなると、食道の内側が狭くなり、食べ物がつかえて気が付くことになります。特に丸飲みしがちな食物(硬い肉、寿司など)を食べたとき、あるいはよくかまずに食べたときに突然生ずることが多い症状です。このような状態になっても軟らかいものは食べられるので、食事は続けられます。また、がんにより胸の中の食道が狭くなった場合にも、もっと上の喉がつかえるように感じることがあります。喉の検査で異常が見つからないときは、食道も検査しましょう。
    癌がさらに大きくなると、食道をふさいで水も通らなくなり、唾液も飲み込めずにもどすようになります。
    ④ 体重減少: 一般に進行した癌でよくみられる症状ですが、食べ物がつかえると食事量が減り、低栄養となり体重が減少します。3ヵ月間に5~6kgの体重が減少したら、注意してください。
    ⑤ 胸痛・背部痛: 癌が食道の壁を貫いて外に出て、周りの肺や背骨、大動脈を圧迫するようになると、胸の奥や背中に痛みを感じるようになります。これらの症状は、肺や心臓などの病気でもみられますが、肺や心臓の検査だけでなく、食道も検査してもらうよう医師に相談してください。
    ⑥ 咳(せき): 食道癌がかなり進行して気管、気管支、肺へ及ぶと、むせるような咳(特に飲食物を摂取するとき)が出たり、血の混じった痰(たん)が出たりするようになります。
    ⑦ 声のかすれ : 食道のすぐ脇に声を調節している神経があり、これが癌で壊されると声がかすれます。声に変化があると、耳鼻咽喉(いんこう)科を受診する場合が多いのですが、喉頭そのものには腫瘍や炎症はないとして見すごされることもあります。声帯の動きだけが悪いときは、食道癌も疑って、食道の内視鏡やレントゲン検査をすることをお勧めします。

    (5) 治療様式;
    厚生労働省データーベースによると2011年4月から2012年3月までの一年間にDPCないしDPC準備の1,634病院において行われた食道癌切除再建手術は5,371例となっています。 一方、日本外科学会が2011年より開始した全国外科医のWeb 登録に基づくNational Clinical Databaseによると2011年の1月から12月までの1年間に施行された食道癌切除再建術数は5,354例と報告されており、両者の数値がほぼ一致していることから、一年間の同手術の施行数に関して信頼性が高いと考えられます。その中で施行されている内視鏡外科手術数の年次推移を日本内視鏡外科学会の全国アンケート調査結果(図2)に示しています。1993~1996年に本院の低侵襲治療センター長の東野正幸先生をはじめとした先駆者により開始された食道癌内視鏡外科手術数は今日まで漸増傾向にあり、殊に2006年以降の増加が顕著です。 National Clinical Database によると2011年の一年間に1,751例に内視鏡下食道癌切除術が行われていると報告されており、これは全食道癌切除再建例の32.7%にあたります(表1)。

     

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    おわりに
    腹腔鏡や胸腔鏡などを用いた内視鏡外科は体表面の傷が小さいことから術後の痛みが少なく、早期の退院と早い社会復帰を可能にしました。1985年にドイツの片田舎で始まった腹腔鏡下胆嚢摘除術は従来の開腹による方法に比べて患者への負担が格段に低いことから瞬く間に世界に広まり、今や胆嚢結石や胆嚢ポリープの標準的治療法になっています。その普及の波は胆嚢から今回テーマにした食道癌の治療様式にも影響してきています。本論文ではその現状を臓器ごとに分けて紹介させていただいています。ロボット手術に代表されるように、医用工学の進歩とあいまって進化している画像装置、手術器材を用いて行う内視鏡外科の更なる発展は疑いのないところと思われます。

    参考文献
    1) Litynski GS. Erich Mühe and the rejection of laparoscopic cholecystectomy (1985): A surgeon ahead of his time. J Soc Laparoendo Surg, 1998. 2(4); 341-346
    2)Takeuchi H, Miyata H, Goto M, et al. A risk model for esophagectomy using data of 5354 patients included in a Japanese nationwide web-based database. Ann Surg, 2014 Apr 16. [Epub ahead of print]
    3)大阪府のがん http://www.ccstat.jp/osaka/index.html
    4)がん情報 http://ganjoho.jp/public/index.html
    5)厚生労働省データーベース http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000037024.html